刃こぼれのある刃物の研ぎ
刃こぼれのある包丁の研ぎが来る事がある。「もうダメかねぇ?」とよく聞かれるが、見た目には強烈でも、3mm程度なら意外と大きな刃先の修正は必要はない。とはいえ、刃線全体を修正しなければいけないのでそこそこ手間はかかる。
初心者がやりがちなのが、刃こぼれを無くそうとして、欠損のある部分だけ研ぐ事。あるいは、包丁の刃線全体を刃欠けの大きさに合わせて潰してしまう事。しかし大事なのは、刃線全体のバランスを取りながら調節して研ぐことで、刃物の形が崩れてしまうと刃が付け難くなる。
また刃先全体を潰してしまうと、その後に左右の肉そぎに手間がかかるのと、中心に刃がつけにくくなるので、刃付作業がかなり大変になる。この作業に慣れた人が専用の道具を使って作業すれば早いのかもしれないが、砥石を使っての作業ではお勧めできない。
最近の私の場合、刃こぼれの修正はダイヤモンド砥石の240番を使い手短に済ませてしまう事が多いが、ダイヤモンド砥石は平面が崩れる事が少ないのでこうした作業をやりやすい。砥石によってはランダムに深い傷が入る事が多く、仕上げてもその傷から微細な欠けが入るので、できれば荒砥も中砥も複数使いながら、順次番手を上げながら傷を消すのが望ましい。
ダイヤモンドに限らず荒砥石は非常に研削力が強いので、左右5回ごとぐらいに刃先を見ながら研いでいく。砥石には荒砥、中砥、仕上げ砥とあるけど、一番神経を使うのはこの荒砥で、ここで形を崩すと修正が難しいし、狙い通りの形にできれば後はそう難しくない。
順序としては右の刃元、真ん中、刃先と進み、左も同じように左右交代で研ぐ。荒砥を使う際の注意は、包丁を寝かせすぎずに通常よりやや立て気味に研ぐ事。柄を持つ手の肘を上げ気味にするとやりやすい。刃を研いだ修正ラインが左右均等に1-1.5mm巾ぐらいになるように刃先を揃えながら刃こぼれを消して行く。
このとき刃を最初からオリジナルの角度に合わせて付けていくと、中研ぎ、仕上と進めていくと寝かせすぎることになり、小刃のない刃先になり欠けやすくなるし、刃先のみは切れるので紙は切れるけど刃の通りが悪くなり、野菜が切り分けられなくなったりする。
荒砥から中砥、仕上げ砥と進みながら、刃を研いだ修正ラインが左右同じ幅になるように研ぎつつ、刃先を仕上げていく。この時仕上げに進むほど研ぐ力を弱くしていき、返りが小さくなるように意識しながら、少しづつ刃先の角度を寝かせてしのぎラインの角をとっていくような気持ちで研いでいく。
最終的には小刃の幅は2mm程度。柔らかい砥石だとすぐに面が崩れてしまうので、硬い砥石の方がやりやすいし、刃物の鋼材によってやりやすい砥石も存在する。それを探すのも研ぎの楽しみの一つでもある。